コーヒーの競技会にはいくつもの種類があることを知っていますか?
ハンドドリップの技術を競うブリュワーズカップや、コーヒー豆の焙煎技術を競うロースティングチャンピオンシップ。
そして今回インタビューしたのは、コーヒーの風味をどれだけ正確に感じられるかを競う世界大会・カップテイスターズチャンピオンシップで優勝を果たしたYoung Baek(ヤン ペク)さんです。
世界トップレベルでコーヒーの特徴を感じ取ることができる彼に、自宅でも実践できる、香りを鮮明に感じるための方法を伺ってみました。
後半では、STTOKE公式アンバサダーとしての活動や、世界チャンピオンになった心境についても伺っています。
前編(日本チャンピオン・森明美穂さんへのインタビュー)はこちら:https://sttoke.jp/blogs/sttoke/cuptasters-miho-moriaki
コーヒーが持つ香りの奥深さと、その楽しみ方
── そもそもコーヒーのフレーバーとは何なのでしょうか?
Youngさん:あまり知られていないですが、コーヒー豆は「コーヒーチェリー」と呼ばれる赤い果実の種子で、それが様々なフレーバーを持っているのです。
フレーバーの種類は100以上。フルーティと一口に言っても、ベリーやピーチ、レーズンなど、現時点で18もの香りに細分化されます。
── そんなにも種類があったのですね。
Youngさん:はい。産地や農園ごとにそれらは全く異なっていて、その違いを楽しめるのがスペシャルティコーヒーの醍醐味とも言えます。
── 浅煎りコーヒーをよく飲むのですが、正直どれもフレーバーが似ているように感じて。
Youngさん:もしかすると、地理的に近い産地の豆を飲んでいるかもしれないですね。たとえばエチオピアとブルンジ。同じアフリカ大陸にあって生育環境が似ているため、どちらもベリー系のジューシーな香りを持っています。
インドネシアとブラジルなど、地理的に離れた産地の豆を選んでみてください。あと、精製方法が違うコーヒーを飲むのもおすすめです。
── 精製方法と言うと?
Youngさん:完熟したコーヒーチェリーを、果実の状態から輸出可能な生豆(焙煎前のコーヒー豆)へと変化させるプロセスのことです。
たとえば、コーヒーチェリーの果肉が付いた状態で乾燥させる「ナチュラルプロセス」は、豆をよりジューシーに。果肉を除去してから乾燥させる「ウォッシュドプロセス」だと、明るく爽やか、クリーンなフレーバーに仕上がります。
── とても興味深いです。同じ豆から異なる印象のフレーバーを引き出す方法はあるのでしょうか?
Youngさん:ミルを持っている方は、豆の挽き目を少しずつ変えて、香りの微妙な違いを体感してみると良いです。
フレーバーの感じ方は、湯温やドリッパーの形でも変わりますが、挽き目が最も成分の抽出に影響するからです。
── なるほど。
Youngさん:お湯とコーヒー粉の割合を変えるのも効果的です。ドリップコーヒーを淹れるには、1(コーヒー粉):16(お湯) が一般的な割合ですが、1:15など濃度を高くしたり、逆に薄くするのも良いでしょう。
ちょっとした違いでも、コーヒーのフレーバーに大きな変化が生まれます。ぜひ試してみてください。
苦手を克服したかった。チャンピオンへの道のり
── ヤンさんはコーヒーに対して広い知見をお持ちですが、カップテイスターズに出場したのはそれを生かすためだったのでしょうか?
Youngさん:いいえ。当時はワールドバリスタチャンピオンシップに出たかったのですが、今のような知識や経験はなく、むしろそれらのレベルが低いと感じていました。
特にフレーバーを感じる能力は本当に低かった...。そこで、カップテイスターズに出て優勝できれば、その苦手を克服できるし、それ以外のチャレンジも簡単に感じられると思いました。
── 得意だからではなく、苦手を克服するためだったのですね。優勝するまでに苦労したことはありますか?
Youngさん:練習の場でというよりは、家族との時間を犠牲にしないといけないのが辛かったですね。
朝6時から午後4時まではバリスタとして勤務し、練習はその後。好きなことに向き合っているので辛さはないですが、家族への申し訳なさがありました。
── でもコーヒーの知見の広さはその練習から生まれたのですね!実際にはどのようなトレーニングを?
Youngさん:1日5時間、毎日練習しました。大会形式で8個のフレーバーパターンを準備して、それを10セット行います。
ただ量も大切ですが、フレーバーやマウスフィール(コーヒーを口に含んだときに感じる質感)の違い、酸味とは何か、といったことを学ぶのも大切だと今は思います。
コーヒー自体を学ぶことが、コーヒーを感じる能力を飛躍させると信じています。
自分のコーヒー体験を世界中でシェアできる、それが幸せです
── チャンピオンになって大きく変化したことはありますか?
Youngさん:世界中を飛び回ることができるようになったことでしょうか。新しい人、コミュニティ、文化に日々触れることができるのは大きいです。
当初はほとんどの方はコーヒーを知らなかったり、カップテイスターズに興味がないと思っていました。でも蓋を開けると、コーヒーを学びたいと潜在的に感じていると実感しました。
彼らに自分のコーヒー体験や知識をシェアできるのはとても光栄なことです。
── 前編でインタビューした森明さんが参加したセミナーもその一環でしょうか?
Youngさん:はい。カップテイスターズの大会で優勝するための、より本格的なセミナーでした。
── 同じような内容のセミナーと、Youngさんのセミナーの違いは?
Youngさん:優勝するために最も大切なことを、できる限りシェアしたいと考えています。カップテイスティングが上達するために意識、経験しないといけないこと。
Youngさん:センサリー(感覚)トレーニングでは、フレーバーを作れる特別なアイテムを使用します。フルーツはもちろん、ガソリンの匂いまであるんです(笑)。これが僕のセミナーの特徴でもあって、「体験」を大切にしています。
理論的なセミナーではなく、楽しくトライして、色々なことを感じてもらいたいです。
オリジナルカップを作りたい
── STTOKEの公式アンバサダーを務めていらっしゃいますが、STTOKEと出会った背景を伺いたいです。
Youngさん:カップテイスターズのオーストラリアチャンピオンになった後、どのようにコーヒー業界に貢献できるか自問しました。
シドニーというコミュニティで、コーヒーの楽しさをシェアしたい。大会を開催してコーヒーの違いを知ってもらいたい ── そして大会を開催した結果、次は「多くの人をコーヒーで一つにするにはどうしたら良いか」という考えに至りました。
── 大きなテーマですね。そこからどのようにSTTOKEと出会ったのですか?
Youngさん:オリジナルカップを作りたいと考えたのです。それは大会でも使えるクオリティで、コーヒーの質を落とすことなく、フレーバーを長く持続させるもの。
プラスチックカップは温度がすぐに下がるからフレーバーを感じにくくなるし、金属製は臭いが移る。それらを避けた結果、STTOKEに辿り着きました。
── STTOKEでカッピングしてみてどうでしたか?
Youngさん:セラミックをコーティングしているから臭い移りしにくいし、真空断熱構造だから温度も下がりづらい。あと、割れないのも嬉しかったです。よく物を割ってしまうので(笑)
ただカッピング用のカップではないので、新しいものを一緒に開発しないか?とSTTOKEに提案してみました。
── もう発売されているのですか?
Youngさん:実は今年の春にリリース予定なんです。日常使いから、コーヒーのカッピングにも使うことができるオールラウンド仕様となっています。ぜひ試してみてくださいね。
── そうなのですね!とても楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました。
Youngさん:こちらこそありがとうございました!
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次回はカップテイスターズ日本チャンピオン・森明さんと、世界チャンピオン・Youngさんとの共同インタビューの様子をお届けします。お楽しみに!
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▼ Young Baekさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/youngsdrip.exp/